弥来成真の世界

瞑想(Meditation)小説。世界の奥へと誘います。

作品2「中一女子 アヤコの想い」

作品2「中一女子 アヤコの想い」

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クラスで一番の仲良しのミカちゃんは、「ダサい」と言うけれど、アヤコは、毎日着ていく女子中学のセーラー服が気に入っている。特に夏服バージョンが好きだ。真っ白の上着の襟は水色を基調として、ダイヤモンドの形が数珠つながりとなった真っ白のストライプが3本入っている。スカーフだって紺、黄、白色から自由に選べるのだ。スカートは上着の襟と同じ水色で、今度はちょっと濃いめの水色のダイヤモンドのラインが何本もタックに沿って刺繍されている。そして靴下も真っ白だ。シンプルだけど、とってもおしゃれだと思う。誰がデザインしてくれたのだろう。小さい頃、父親とよく遊びに行った近所の海辺の公園を思い出す。もう随分と前に引っ越してしまい、それ以来一度も訪れる機会がなかったけれど、この制服を着て、あの海辺の公園を歩いてみたいと思う。

今日は、秋の連休を利用して、母親の実家のおじーちゃんとおばーちゃんの家に向かっている。隣の席で車を運転している母親はちょっと不機嫌そうだ。いつもこんなもんか。目的地に近づくにつれ、アヤコは、あ~あ、とだんだん憂鬱になってきた。
(つづく)【2013/09/06記】  

母親の実家は、辺り一面、田んぼと畑が広がっている山村地域にあり、緑豊かでとっても気持ちがいい。だだっ広い庭には、いろんな樹木が様々な色と形の葉を広げ、雑草も生い繁っていて、ジャングルちっくで、散歩していると自然と心が躍ってくるのだ。だけど、せっかくの連休なのに、勉強漬けにならなければならないなんて、何という悲劇だろう。学校の成績が悪いことがそんなにいけないことなのだろうか。おじー
ちゃんは、本当に熱心に教えてくれていることは伝わって来るけれども、やたらと声がでかいし、直ぐに興奮してわめくように話すし。母親とそっくりだ。方程式なんて見たくもないよ。なんであんなものがあるのだろう。「あ~あ」、「あ~あ、じゃないでしょ!」アヤコのぼやきを母親が強圧的に封じる。「いつもさぼっているからこうなるんでしょ。このままじゃ赤点確実で進級できなくなっちゃうんだから」あ~あ、、、アヤコは喉から出掛かった溜息を何とか飲み込む。車の中には、数学、理科、英語と言う、おぞましい教材がどっさりと積み込まれている。到着するまでに出来る限りマンガを読んでおこう。
(つづく)【2013/09/09記】

お昼過ぎから、祖父によるアヤコの数学教化特訓が始まってから一時間が経過しようとしていた。アヤコの中学受験の約一年前から仏壇のある一五畳の居間が、特訓部屋として使われていた。机の替わりの座卓には、ホワイトボードが載せられている。昨年の中学受験の特訓をしているときに紙が足りなくなってしまい、困ってしまったことがあったので、祖父が用意しておいたのだ。祖父は、アヤコがホワイトボード上で方程式をいくつか解くと、くたびれた切ったタオルでマジックのインクを素早く拭き取っていく。
XとかYとか、掛けたり、=(イコール)の右にやったり左にやったり、うぅ。もう限界だ。アヤコの携帯電話がメールの着信を告げた。
「じーこ。ちょっとメール見るよ」
ミカからだ。
『どうよ 国語の宿題 意味不 理科 ムカツク 夜空なんて見ないっつーの!』
アヤコの口元が思わずほころぶ。素早く返信する。
「おい。アヤよ。あと三問だから、そしたらちょっと休憩だ」
あと三問もかよ。直ぐにミカから返事がきた。
『ときどきユカのことを殺したくなるよ バカかあいつ』
ミカは何ていい奴なんだとアヤコはつくづく思う。
(つづく)【2013/09/11記】

ようやく休憩だ。ほんともう気がおかしくなるところだったよ。廊下の先のリビングからおばーちゃんが呼んでいるようだ。「アヤちゃん、お腹空いたでしょ。ニンジンが好きだなんて、とってもいいことよ」というと祖母は、テーブルについたアヤコの目の前にこんもりと盛りつけた肉じゃがを置いた。ほかほかと湯気が立ち上がり、肉じゃがの匂いが食卓全体を満たしていった。ほくほくのジャガイモ、煮汁がたんまりと沁みこんでいるニンジン。鍋からよそわれた肉じゃがが母親やおじーちゃんの前にも置かれていく。おばーちゃんがテーブルに置くと、器は不思議とコトリとも音をたてない。蝶がふわりと花に舞い降りる時のようだ。ドアや襖を開けたり閉めたりする時もそうなのだ。襖におばーちゃんの手が掛かり、襖がすーっと敷居の溝の上を滑らかに移動していき、いつの間にか止まっている。おばーちゃんのする動作は、周りを邪魔することなく、紅茶に入れられた砂糖のように辺りにとけ込んでいく。それが、母親だとまるで違う。家の中がガタガタ、ガチャガチャ、ドタンバタンと騒々しいったらありゃしない。全くファミレスやファーストフード店の厨房、いやいや建設作業か道路の工事現場じゃないんだからさ。
「アヤちゃん、ニンジンたくさん食べるといいよ」普段から家で使っている茶碗よりだいぶ大きめのお椀に盛られた肉じゃが。見るからに柔らかく煮込まれたじゃがいもとニンジン。この前食べたのはいつだったけな。スプーンでこんもりすくってもぐもぐと。口の中が出汁で浸されていく。あ~そうだ。この柔らかいおばーちゃんの味付け。おいしい。「アヤちゃん、じゃがいもも人参も莢豌豆もうちの畑で採れたものばかりだよ」とおばーちゃん。「夏休みにアヤちゃんが植え付けたじゃがいもだよ」これが、あの時のやつか!
(つづく)【2013/09/13記】

おじーちゃんに教わりながら、種芋を一つ一つ畑に埋めていったことが思い出される。あの時は、結構暑かったし、疲れたわりにこんなことだけで本当にお芋ができるのだろうかと半信半疑のまま、今の今までじゃがいものことなんか忘れてしまっていたけれど、ちゃんとお芋は育っていたんだ。種芋を植え付けただけであとはな~んにもしなかったけれど、アヤコは、これまでに味わったことのない充実感に満たされていた。今、あの畑は、どうなっているんだろうか。

「あとでお芋掘りにいっていい?」おばーちゃんがにっこりとしてくれたと思ったところ「アヤ、内接円を描いたら、あとは、何をどうするんだっけ?」とおじーちゃんが大きな声で話しかけてきた。「内接円・・・」ついさっきまで廊下の向こうの特訓室で何度も図形を描きながらたたき込まれたはずのこの言葉は、何の実感も感慨も引き起こすことなく、アヤコの意識の表面をあてもなくただただ漂流し続けた。「内接円」という言葉は、じゃがいもやにんじん、芋掘り、カエル、畑、夏休みという言葉とは違い、どこだか知らないが、遙か彼方の遠い世界に住んでいる自分と何の係わり合いもない何者か同士で交わされているようなものにしか感じられなかった。「内接円を描いたら、ほれ、円の中心、何て言ったっけさ」おじーちゃんが畳みかけてくる。「内心。いいか。内接円と内心。さあ、どうすんだっけ?」「ちょっと、あんた。そんなしたら、休憩にならないでしょうに。ゆっくり肉じゃがを食べさせてあげないと」「ちょっとぉ、余計なこと言わないでよ!この子、中間試験で数学が滅茶苦茶だったんだからさぁ!」母親が、おばーちゃんに食ってかかる。「さあほれ、内接円を描いて、内心を付けて、さあほれ、次はどうするんだっけ?」何が、ほれほれだ。ここ掘れワンワン・・・はなさかじいさんの隣に住んでいる欲張りじじぃみたいだ。わたしは、犬じゃないんだからさ。いやになる。掘りたいのは芋なんだよ。
(つづく)【2013/09/17記】

「アヤっ!ちゃんと答えなさい!芋なんて掘ってる場合か!」
わたしは何か悪いことでもしたのだろうか?種芋を植え付けた記憶がぼんやりとしながら遠のいていく。
「さあて、久しぶりに芋掘りでもしてくっかな。楽しいだろうな~」叔父さんは、こう言うと私の顔を見てケタケタ笑いながら、玄関に向かう廊下に出ていった。
何なんだ、あいつ。これみよがしに私の癪に障ることを言ってそんなに楽しいのか。母親の弟の分際のくせして。
アヤコは、幼稚園児だった頃に叔父さん結婚式に参列したことがあった。あの教会はどこにあったのだろうか。いまでもあるのだろうか。叔父さんが随分前に離婚したことをつい最近知った。アヤコが、小学2年生の時だったという。あの教会でウェディングドレスを着ていた女の人を見かけないなぁとずっと不思議な感じがしていたのだ。あの女の人の顔も名前も思い出すことは出来ないが、さっきまでおじーちゃんと勉強していた部屋のソファの上で、確かあの女の人は私に昔話の絵本を読み聞かせてくれたのだ。どんなお話だったか思い出せないけれど、その時の女の人の声の印象が余韻として残っているようだ。それは、柔らかい日射しの温もりを帯びていた。まだ、私の理解力が十分でなかったのかもしれない。懇切丁寧に何回も同じページをいったりきたりしながら、ようやく「めでたし、めでたし」まで辿りついた気がする。おそらく、私のことだから、終わった途端に「もう一回」とおねだりしたに違いない。一体、何のお話だったのだろうか。母親に訊いたら分かるだろうか。おじーちゃんやおばーちゃんじゃ訊いても無駄だろうし、もしかしたら、叔父さんなら知っているかもしれないけれど、やっぱ訊きづらい。いや、ここにいる誰一人として分からないだろうし、あの女の人だって忘れてしまっていることだろう。  
(つづく)【2013/09/19記】

かなり年季の入った薄汚れた長靴を履いて、おじさんが前庭から畑の方へ歩いて行くのがガラスの引き戸越しに見えた。本当に芋を掘ってくるつもりなのだろうか。
「アヤちゃん、ゆっくりお食べ。よく噛んでね。勉強が終わったら畑に行こうね。アヤちゃん用の長靴を出しておくから」とおばーちゃんが言ってくれるのに、「そんな時間があるか!さっさと食べて続きを始めなさい!このままじゃ、進級も危ないってわかってるのか!」間髪入れずに母親の怒鳴り声。おばーちゃんに返事もできやしない。何で母親は、でかい声でしか話さないんだろう。年がら年中、声を張り上げてよくぞ声帯がぶっ壊れないものだ。昔からそうだったんだろうか。これこそ小さい頃からの鍛錬の賜物というものか。後でおじさんに訊いてみよう。これなら訊いても気まずくならないだろうし。

こうして、休憩時間はあっけなく過ぎていった。

つまらない。途轍もなくつまらない。数学って、一体何だ。勉強って何なんだ。如何様にしても感情移入することができない記号の羅列に無理矢理向き合わさせて、意味が飲み込めないまま作業を続けなければならないなんて苦しいだけだ。みんな、我慢しているだけなんじゃないだろうか。どうしても分からない。なぜこんなことをしなければいけないのか。全員狂っているとしか思えない。少なくとも、おじーちゃんは、気が違っている。

アヤコは、数学の練習問題をやっとこさやり終えて、ずっと座卓に伏せていた顔を上げてみると、外はまだまだ明るかったのだが、前庭の空気には夕闇がわずかに滲み込んできているのが感じられた。昨晩自宅では、ちょっと蒸し暑いくらいで寝ながらベッドの上で薄手の掛け布団を蹴ったぐってしまったし、今日朝早くおじーちゃん、おばーちゃんちへ向けて出発したときは、とても上着を羽織る気にはなれなかったが、いまここで、山麓のひんやりとした秋の気配にはっとなった。ああ、あっと言う間に夕闇に包まれてしまう。
(つづく)【2013/09/24記】

「終わったー!」アヤコは、祖父に目配せすると一目散に畑に向かった。叔父さんはまだいるだろうか。相当の芋を掘られてしまっているかもしれない。畑に叔父さんの姿はなかった。いや待てよ、繁みの向こうにしゃがんでいるのかもしれない。芋を掘りに勢い付けて来たはいいが、いざ実際に掘ろうとすると芋畑のどの辺を掘るべきなのか、どこが掘り頃で、どこがまだ芋が十分に大きくなっていないのか皆目検討がつかない。それにだ。スコップとか掘り道具を持ってきていないことに気がついた。ぐるりと見渡しても叔父さんの姿は見えない。叔父さん、どこに行っちゃったんだ?裏の竹林の方かな。でも、あそこは、お墓の側だからいくら叔父さんだってもうじき日が暮れるのに近づきはしないだろう。

嫌で辛くてたまらなかった勉強から解放されて、畑にすっ飛んできたら、叔父さんが芋を掘り出していて、ちょっとアヤにも掘らせてよ、スコップ貸してよ、どの辺がいいの?とか言って、畑にしゃがみ込んで土を掘り起こし、、、と事が運んでいたなら。
アヤコは、ついさっきまで芋を掘るために躍起になっていた行き場のない気持ちを抱えたまま畑の中で一人ポツンと立っていた。はっきりと誰に対してと意識したわけではなかったが、大声を出したい衝動に駆られ、大きく息を吸い込んだまさにその時、向こうの方の川べりの茂みの傍らに佇んでいる叔父さんが目に入った。
何だ、いるんじゃないか。叔父さんは何かを探るような目つきで灌木の黒みがかった葉の端を見ていた。アヤコが近くにいることに全く気付いていないようだった。
「あのさあー」とアヤコが叔父さんに声をかけると、叔父さんはちらっと振り向き、そしてゆっくりと近づいてきた。(つづく)
【2013/09/26記】

叔父さんは、手にしている小さな本をちらちら見ては、頭の中で何かを整理しているような面持ちでアヤコの方に歩を進めてきた。
「何してんの?」
「うっふっふ。ようやく分かったぜ」
「何が?」
「あの木だよ」と叔父さんは、さっきまで近くで観察していた木を指さして「ユズリハ。あの木はユズリハっていう木だったんだよ!ずっと前から気になってたんだよな。ほら」と言って、アヤコに手にしている本を開いて見せた。それは、樹木の種類名前を系統立てて並べている図録なようなもので、なるほど、「ユズリハ」のページに載っている樹形写真と一枚一枚の葉っぱの絵の特徴が、言われてみれば、あの木と同じ種類という感じがした。「杉とか檜とかだったら、分かるんだけどさ、この辺りのほかの木って以外と知らないんだよな」と叔父さんは満足そうにしている。「あとさ、あの木の正体も判明したんだよね」と今度は前庭に生えている木を指しながら「あの木、何の木か知ってる?」と訊いてくる。まあ、どうでもいいだけど、とアヤコは思いながら「知らないよ」「あの木は、マキっていうだよ。あの木が槙だったんだよね」と叔父さんは頷いている。全然興味ないんだけどな、、、そうそう、こんなことしてる場合じゃなかったんだ。
「芋掘れたの?」
「芋?芋なんて掘ってないよ」
なんだとー!?アヤコが絶句して叔父さんを見ていると、叔父さんは「そんなめんどいことをする訳ないじゃんか」とケタケタ笑っている。そうだったよな。この叔父さんってのは、いつもいつもこうやって、取り付く島もないことを言っていたっけ。アヤコには、叔父さんを芋掘りに協力させることはもはや不可能と思われた。(つづく)
【2013/10/01記】

 うぅ、何も言うことが思いつかない。アヤコが黙りこくっていると、「芋を堀りたきゃ、掘んなよ。スコップ?あっちの倉庫にいくつかあるんじゃないのか。それより、その靴、長靴かなんかに履きかえた方がいいよ」と、叔父さんは、意外にもアヤコの背中を押してくれるようなことを言う。そうだった。せっかく、おばーちゃんが用意してくれていた筈なのに。うっかりして外出用の靴を履いて畑にきてしまった。長靴に履きかえに行くと思っただけで、土をこの手で掘り返し、ジャガイモをこの手で握りしめるというイメージがぐっと胸に迫ってきた。
「おばーちゃん、長靴どこ?」とアヤコは玄関口で細い廊下の先にある居間の方に呼びかけたが、全く何の反応がない。「おばーちゃん、長靴どこ?」アヤコは声を一層張り上げてみた。居間の方で誰かが何かを発言したことは分かったが、何を言っているのかはっきりと聞こえない。そもそも、それが、アヤコの呼びかけに対する応答なのかどうかもあやしいところだ。
「おい、アヤコが何か言ってるみたいだぞ」と祖父は冬にはコタツとして使うテーブルに拡げた新聞に目をやりながら、隣で座布団を枕にして寝ころんでいる祖母に話しかけた。祖母は少し頭を動かしたが、天井を見つめているばかりだ。「アヤコがさ、長靴がどこにあるのかだってさ」とキッチン近くのテーブルについている母親が携帯電話をいじりながら祖母に伝えてみたが、祖母は素知らぬ顔のままだ。だからといって祖母が眠り込んでしまいそうだという訳でもなく、返事をするのが面倒で無視しているという訳でもないようだった。(つづく)
【2013/10/07記】

「おいっ、長靴だよ、長靴。アヤコが長靴だってよ!おいっ!だから補聴器つけろって言ってんじゃないか!わざわざ東京まで行って何のために買ってきたんだよ!補聴器つけろ!」祖父が祖母に向かって怒鳴るように声をかけたが、祖母は怪訝な顔をして半身を起こすと「何?」という風に祖父の顔をじっと見る。
「ア・ヤ・コ・ノ・ナ・ガ・グ・ツ」祖父は、一音一音はっきりと区切って発音したが、「だから何?」と祖母。「補聴器をつけろ!お前とは会話にならん!」祖父はまさに匙を投げた感じだ。間近に自分の両親の様子を見てアヤコの母親は、こんなやりとりが何度繰り返されてきたことか、、、と思い、思わず吹き出してしまった。

「おばーちゃん、長靴どこ?」とアヤコはもう一度、居間に向かって声を張り上げてみたが、自分の声は、目の前の廊下や階段や玄関脇にある客間に何の手応えもなく吸い取られていくように感じた。観客のいないコンサート会場の舞台の上から大声で叫んでみたらこんな感じがするかもしれない。いや、どこかの天高く屹立した連峰に登って行って、向こうの方に見える岳々に向かって「ヤッホー!」と言っても木霊が返ってこないとしたらこんな感じかな。この手応えのなさ。完全防音の部屋の中からガラス扉の向こうの人たちに必死で叫びかけてもこっちに全然気付いてくれなかったとしたらどうしたらいいのだろう。
玄関でいくら大声を出したところで無駄という気がしてきたが、だからといって、わざわざ家に上がって居間のドアを開ける気にもならなかった。開けた途端、中にいる奴らが会話をぴたりと止めて、一斉に私の方を見る。そして母親が、まず、あの野太い声をボリューム一杯にして、、、イメージするだけでげんなりする。(つづく)
【2013/10/17記】

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